さて、今回も隠蔽捜査に学ぶ!シリーズです。
第3回目ですが、基本的に1回完結型になっているので、どこから読み進めていただいても大丈夫です。
「疑心 隠蔽捜査3」は正直、作品としてはやや見劣りすると思います。1作目・2作目で上がったハードルを越えられなかった、という印象が拭えません。かつ、物語の主人公である竜崎がある状態になり、使い物になりません。
ただ、そんな中でも考えさせられるフレーズは健在ですので、ピックアップしてご紹介したいと思います。
ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。
「疑心 隠蔽捜査3」とは?
まずは簡単に「疑心 隠蔽捜査3」の紹介から。
著者:今野敏(こんのびん)1955年北海道生まれ。
出版:新潮社 (2012/1/28)
あらすじ:
アメリカ大統領の訪日が決定。大森署署長・竜崎伸也警視長は、羽田空港を含む第二方面警備本部本部長に抜擢された。やがて日本人がテロを企図しているという情報が入り、その双肩にさらなる重責がのしかかる。米シークレットサービスとの摩擦。そして、臨時に補佐を務める美しい女性キャリア・畠山美奈子へ抱いてしまった狂おしい恋心。竜崎は、この難局をいかにして乗り切るのか?
(「BOOK」データベースより)
はい、驚きのフレーズがありますね。
「狂おしい恋心」・・・あの竜崎が。
全くもって信じられませんが、これが物語の1つの軸を形成してしまっています。
(主軸は大統領訪日に伴うテロ企図事件です)
なので、物語としての読み応えは正直微妙なところはあります。ただ、それでも良いフレーズや学ぶべき教訓も確かに存在しています。
理性を保ち行動する
人間を人間たらしめているのは、間違いなく理性なのだ。
理性があるから、人間は他の動物と区別される。
感情的になることを竜崎は嫌います。感情は時に冷静さを失わせ、適切な判断を下す障害となるからです。
感情を完全に排することなどできません。かつ、個人的には望ましい感情は残しておくべきだと思います。喜怒哀楽でいうなら、喜・楽は残して怒・哀は極力無くすようなイメージでしょうか。
なので、上記のフレーズは少々過激な思想だと思いますが、負の感情が頻繁に増幅してしまうようならば心に留め置くべきだと思います。
プレイヤー⇔管理者として動く
「重要な事案のときには、管理官が自ら陣頭指揮に立つ。その覚悟はけっこうだと言っているんだ」
「キャリアに必要なのは、総合的な判断だ。現場のことは、適任者に任せればいい」
「最前線に立つ指揮官は、兵士に好かれる」(中略)
「だが、司令部からは嫌われる」
上2つは竜崎の、3つめはシークレットサービス(主にアメリカ合衆国大統領の警護を行う執行機関)の警護官が竜崎に対して発したセリフです。
竜崎は管理官は判断・決断を下す、そういう立場の者であると考えています。しかし前回の「果断」のように、実際に現場に足を運ぶこともあります。
そして見事にその場を指揮してみせます。
実際に仕事の現場でも、役職者は判断・決断を下す立場にいることが多いと思います。しかし現場の実情がわかっていなければ、適切な判断を下すこともままなりません。ただ、ここにはバランス感覚が必要であると思います。
現場に近すぎると全体を俯瞰した的確な判断が下せず。
現場から離れすぎると実情とは程遠い指示を出すことになります。
竜崎はこのあたりのバランス感覚に優れています。現場に行ったとしても、決しておごらず、現場のプロにその場を任せます。自分の判断が必要だと考えられるときのみ、現場を総合的に見て、指示を出す。
こういったことができる上司は非常に有能でしょう。
3つめのセリフも竜崎は意に介しません。その評価は感情的なものであり、意味を成さないからです。
出世も大切
公務員は出世すべきだ。竜崎は常日頃そう思っている。出世するというのは、それだけ権限が増えることを意味している。権限が増えれば、できることも多くなる。
竜崎は出世を否定しません。
しかしそれは権威欲を満たしたい、というような低俗な理由からではなく、上記にあるように「できることを増やすため」です。
ここまで責任感のある上司も珍しいでしょう。
最近は「出世はしたいが責任は取りたくない」上司が多いように感じます。問題が起これば、誰のせいなのか、原因は何なのかを調べ上げます。そして「自分は関係ない」ことを証明するために躍起になる。
人員不足の会社や古い慣習が残っている会社では、経験者・年かさの者から順に上の立場になっていくでしょうが、それは本来の「出世・昇進」ではありません。出世とは人望と能力、そして何より「責任感」により成されるべきものだと思います。
そうして上席になったものが、本当に指示を出すにふさわしいのです。
みなさんの会社ではいかがでしょうか?
上司の方は責任感あふれる素晴らしい方でしょうか。そうであるならば、大変幸せですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(引用箇所は全て『疑心 隠蔽捜査3』より)