皆さん、小説はお好きでしょうか?私は大好きでして、気になる本があるとついつい買ってしまいます。
今回ご紹介する「隠蔽捜査」もその内の1冊。
ただこの本、面白いだけではなくとんでもないビジネス指南書だったのです。
今回は隠蔽捜査の書評をしつつ「上司・仕事」といったテーマで書いていきたいと思います。
隠蔽捜査とは?
まずは簡単に隠蔽捜査の紹介から。
著者:今野敏(こんのびん)1955年北海道生まれ。
出版:新潮社 (2008/1/29)
受賞:吉川英治文学新人賞
あらすじ:
竜崎伸也は、警察官僚である。現在は警察庁長官官房でマスコミ対策を担っている。その朴念仁ぶりに、周囲は“変人”という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決してゆく。
(「BOOK」データベースより)
俗にいう「警察小説」ですね。事件が起こり、それを解決していきます。ミステリーならば「犯人はだれか」「どんなトリックを使ったのか」など、謎が解けていく快感を味わえますが、この小説では登場人物の振る舞いが痛快なのです。
主人公・竜崎伸也
彼は東大法学部卒のキャリア官僚です。原理原則を大切にし、本音と建前を使い分けません。合理主義のカタマリです。そんな男が世間でまかり通るハズがありません。
しかし原理原則を大切にしているからこそ、彼の言葉には説得力があり、そんな彼に周りも巻き込まれていきます。
上司のあり方
無能な上司は、何か問題が起きたときに、それが誰のせいかを追求したがる。有能な上司は、対処法を指示し、また何かのアイディアを部下に求める。
(『隠蔽捜査』より)
むちゃくちゃうなずけませんか?
無能な上司は、さらにその上の上司からの責任追及が怖いのです。自己保身しか考えることができません。しかし、組織の上席というのは、責任者です。部下の管理に、管轄する組織の活性、そして何かが起こった時の対応など、その責任の範囲は非常に広いものです。
「責任」の意味が分かって上司になる者とそうでない者。
どちらが部下からの信頼を得るか、そしてさらに上役の者から評価されるのか。スタート地点は同じでも行きつく先は火を見るより明らかですよね。
竜崎は部下の信頼や上司からの評価に固執するような性格ではありませんが、こういったことが自然と考えられる人物です。
まぁ出世は大切だと考えていますが・・・。
仕事への姿勢
「人間、いざというとき、なかなか冷静になれないものだ。だが、大切なのは冷静になったときの対処の仕方だ。いかに善後策をすみやかに講ずることができるか。それで、ダメージの大きさが決まってくる」
(『隠蔽捜査』より)
これは警察の大スキャンダルとなる事件が起こった時の竜崎のセリフです。なので、かなり緊迫感のあるシーンです。
しかし、ビジネスや日常生活でも同じことが起こりうるのではないでしょうか?
- 仕事や人間関係で大失敗してしまった
- 厄介な問題を抱えてしまってどうにもできない
- 周りが見えないくらいパニックに陥ってしまう など
ただこんな時でもふと冷静になると、客観的に自分を見つめることができます。そうして最善の策を自身の力で、難しければ他人の力も借りながら講じていく。
リカバリーできないまでも、最小限のダメージに食い止めることができれば、結果も自ずと変わってくるはずです。
おわりに
どんなにつらくても、耐えなければならないときがある。それが生きていくということだ。
(『隠蔽捜査』より)
物語も終盤、竜崎にとっては決して「ハッピーエンド」とは言えない結末が待ち構えています。それでも、乗り越える決心をします。
もしかすると現代においては「古臭い」と一蹴されるような考え方かもしれません。
「耐える必要なんてない」
「逃げたかったら逃げたらいい」
これらの意見には私もおおむね賛成です。ニュースで目にするブラック企業での過労、そして凄惨な結末などは本当に心が痛みます。
ただ何でもかんでも逃げてしまってはいけないと思います。グッと歯を食いしばって耐えることで達成できること、見えてくるものもあると思います。
「死にたくなるほどじゃない、でもしんどいな」
そんなときに思い出すフレーズです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。